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相続税の税金対策12選!特例や基礎控除を最大限活用する方法

親族が亡くなった際に直面する相続税。基礎控除を超える財産があると発生するこの税金は、事前の対策なしでは家族に大きな負担となることがあります。特に不動産や金融資産が多い方は、早めの準備が欠かせません。

本記事では、基礎控除の仕組みから生前贈与、不動産活用、生命保険の活用まで、相続税を賢く抑える12個の対策法をわかりやすく解説します。「500万円×法定相続人の数」の非課税枠を持つ生命保険や、最大80%評価額を減らせる小規模宅地等の特例など、知っているだけで大きく変わる節税ポイントをご紹介。二次相続まで見据えた計画的な対策で、大切な財産を次世代へスムーズに引き継ぎましょう。

相続税の節税における基礎控除の重要性

親族が亡くなって相続が発生したとき、まずは基礎控除について理解しておくことが大切です。基礎控除とは相続税計算時に用いられる非課税枠のことを指します。財産の総額から基礎控除額を差し引いた金額に対してのみ課税される仕組みになっています。

基礎控除額を正確に把握するためには、亡くなった方の法定相続人の人数を確認することが必要です。相続税の節税対策としては、基礎控除のほかにも税額控除などの方法があります。

基礎控除の計算方法

相続税における基礎控除は、次の式で算出できます。

【3,000万円+600万円 × 法定相続人の数】

この計算方法によると、法定相続人の人数によって控除額が大きく変動することがわかります。

例えば法定相続人が1人の場合は、被相続人の財産が3,600万円を超えると相続税が発生します。法定相続人が2人になると、4,200万円を超えた場合にのみ相続税が課されます。逆に言えば、基礎控除額より財産が少なければ相続税は発生しません。

相続税節税のために知っておくべき基礎知識

相続税対策を考える上で、死亡退職金などの非課税財産が存在することや、財産の種類によって評価方法が異なることを理解しておくことが重要です。相続税を抑えるためには、これらの知識をしっかりと把握しておきましょう。

できるだけ基礎控除の範囲内に収まるよう、生前に財産を適切に処分しておくことが節税の鍵となります。また、非課税となる財産へ組み替えるといった工夫も効果的です。

非課税となる相続財産について

相続財産が基礎控除額を下回る場合、相続税は非課税となります。そのため、生前から財産を少しでも移転しておくと、課税対象となる相続財産を減らすことができます。具体的な方法としては、家族への生前贈与が挙げられます。ただし、年間110万円を超える現金贈与には贈与税が発生するため注意が必要です。

また、相続した財産の中にも非課税となるものがあります。例えば、被相続人が勤務していた会社から支払われる死亡退職金は、「500万円×法定相続人の数」までは課税対象外となります。

財産の種類による評価方法の違い

相続財産の種類によって評価方法が異なることも覚えておきましょう。現金の場合はそのままの金額が評価額となりますが、不動産は相続税路線価などを基準とした評価方法により、時価の約8割程度で評価されることになっています。

このため、現金をそのまま保有するよりも、不動産に組み替えておくと相続財産の評価額を下げられ、基礎控除を有効活用できる可能性があります。

不動産相続の際には、特例の活用も検討すべきです。特に土地の相続税評価額を80%減額できる「小規模宅地等の特例」は有効な手段となります。この制度については後ほど詳しく解説します。

相続税の税金対策としてできること

相続税を効果的に節税するためには、いくつかの重要なポイントを押さえておくと安心です。主な対策としては以下のようなものがあります。

配偶者へのおしどり贈与や子育て・教育のための一括贈与、住宅購入のための贈与、改正された「相続時精算課税制度」などの生前贈与を活用する方法があります。また、非課税となるお墓や仏壇などを購入したり、国や自治体へ寄付したりすることで課税対象となる財産を減らせます。そのほか、非課税枠のある生命保険の活用や、現金よりも節税効果の高い不動産への資産変換、養子縁組による法定相続人の増加なども効果的です。

毎年110万円以下の生前贈与(暦年贈与)

毎年1月から12月までの期間内で110万円以下の贈与を行うと、贈与税はかかりません。ただし、相続税対策として毎年同じ時期に同じ金額を継続的に贈与していると、大きな金額を分割して渡しているだけの「定期贈与」と判断され、総額に対して贈与税が課税されるリスクがあります。

このようなリスクを避けるためには、贈与のたびに贈与契約書を作成するといった対策が有効です。贈与の意思を明確に示すことで、定期贈与と見なされるリスクを軽減できます。

相続時精算課税制度【令和6年1月改正】

従来の「相続時精算課税制度」では、2,500万円までの生前贈与が非課税となる「特別控除」が大きな特徴でした。この制度では、贈与者が亡くなった際に贈与額を相続税の対象財産に戻し、あらためて相続税を計算する仕組みになっています。贈与者が元気なうちはよいものの、亡くなった時点で結局は贈与分も含めて相続税を支払う必要があるため、直接的な節税効果には限界がありました。

令和6年1月の改正により、相続時精算課税制度にも年110万円までの基礎控除が新たに追加されました。年間110万円以下の贈与であれば贈与税がかからず、相続税の対象財産にも組み込まれないようになったことが大きな変更点です。従来の特別控除2,500万円に加え、この追加控除をうまく活用することで、贈与金額によっては効果的な節税につながります。

60歳以上の直系尊属から18歳以上の子や孫に財産を贈与する場合は、この制度の活用を検討してみるとよいでしょう。

お墓など非課税財産を生前に購入

墓地や墓石、仏壇、仏具などは相続税の課税対象外となる財産です。そのため、将来的に相続人が購入する必要があるとわかっているなら、生前のうちに用意しておくことをおすすめします。現金の形で財産を残すよりも、相続税の対象となる財産を減らせるため、節税効果があります。

ただし、墓石などをローンで購入する際には注意が必要です。例えば、死後にローン残高が残っていた場合、その残額分は相続税で控除されません。控除対象とするためには、生前にローンの支払いを完済しておくことが重要です。

生命保険への加入

相続税の節税対策として、生命保険の加入は効果的な方法です。生命保険金には「500万円×法定相続人の数」という非課税枠が設けられているため、相続税対策として生命保険を活用すると、相続財産の一部を非課税にできる大きなメリットがあります

生命保険の中でも、一定年齢までしか保障されないタイプより、生涯にわたって死亡または所定の高度障害が保障される「終身保険」がおすすめです。途中で解約していなければ、いつ相続が発生しても保障が継続している可能性が高いからです。

ただし、この控除は相続人が受け取る保険金のみが対象となる点に注意が必要です。もし相続人ではない人が受取人に設定されていた場合、その部分は非課税枠に含まれません。生前のうちに、保険金の受取人が誰になっているかを確認しておくことが大切です。

不動産の購入

現金や預貯金の場合、その金額がそのまま相続財産として計上されます。一方、不動産は時価が影響するため、資産価値は変動します。また、換金しにくいなど預貯金より自由度が低いことから、相続税評価額の計算ルール上、土地は時価の約8割程度に抑えられます。

相続財産の対象となる評価額が下がれば、それだけ節税効果も高まります。

さらに、賃貸用として所有している不動産であれば、評価額はより一層下がります。自分が住む不動産よりも、自由に売却して換金することが難しいとされるためです。特に、利便性の高い場所にあるワンルームマンションを区分所有して賃貸に出すと、その不動産の評価額を大幅に下げられる可能性があります。

おしどり贈与(贈与税の配偶者控除)

おしどり贈与とは、贈与税における配偶者控除の特例を指します。通常、基礎控除の年110万円を超えた贈与には贈与税がかかりますが、次の2つの条件を満たすと、さらに2,000万円までは非課税となります。

  • 婚姻期間が20年以上の夫婦間における贈与
  • 一定の要件を満たす居住用不動産あるいは居住用不動産の購入資金を贈与した場合

つまり、基礎控除として年110万円、おしどり贈与として年2,000万円の、合計2,110万円までなら贈与税がかからない仕組みになっています。

結婚・子育て資金の一括贈与の特例

子や孫の結婚・子育てを支援するための特例もあります。正式名称は「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」で、令和7年3月までの期間限定で実施されています。この制度を利用すると、子や孫1人あたり合計1,000万円までは非課税となります。

ただし、相続までにすべて使い切れば贈与税は課税されませんが、贈与者が亡くなった場合、残高は相続財産に加算される点には注意が必要です。

教育資金の一括贈与の特例

子や孫にまとまった教育資金を贈与したい場合に利用できる特例です。非課税となる条件は以下のとおりです。

  • 直系尊属(両親、祖父母など)から、30歳未満の直系卑属(子、孫など)への贈与であること
  • 受贈者1人あたり、最大1,500万円までの教育資金が非課税になる
  • 学校以外の習い事などへの支払いは、最大500万円まで
  • 贈与者と受贈者の間のやりとりには金融機関を介する必要がある

仕組みとしては、贈与者がまず金融機関で専用口座を開設して資金を預けます。受贈者は教育資金が必要になった際、金融機関に申請して払い戻しを受ける形式です。目的が教育資金かどうかもしっかり確認されます。

贈与者が亡くなり、相続時点でまだ残高がある場合は、原則として相続財産に加算されます。ただし、贈与された時期によっては、一定の基準を満たせば加算されないケースもあります。令和8年3月31日までの特例措置となっているため、検討中の方は詳細を確認するとよいでしょう。

住宅取得等資金贈与の特例

住宅取得等資金贈与の特例は、子や孫が住宅を購入する際の資金贈与を支援するために設けられた制度です。令和4年度の法改正後は、家屋の基準に応じて以下のように非課税限度額が定められています。

  • 省エネ、耐震、バリアフリーなど一定基準をクリアした住宅は1,000万円まで非課税
  • それ以外の住宅は500万円まで非課税

この特例を利用することで、住宅購入資金の贈与にかかる税負担を大きく軽減できます。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たす宅地の評価額を引き下げ、相続税の負担を軽減する制度です。具体的には、被相続人が自宅として使用していた宅地の場合、最大330㎡の面積まで評価額を80%減額できます。

被相続人と同居していなかった場合でも、以下の条件をすべて満たせば「家なき子特例」を利用できます。

  • 被相続人に配偶者や同居の相続人がいないこと
  • 相続開始前の3年間、持ち家に住んでいないこと
  • 相続した土地を、相続開始から相続税の申告期限まで所有し続けていること
  • 相続開始時に住んでいた家をこれまで一度も所有したことがないこと

この特例を活用することで、相続税の負担を大きく軽減できる可能性があります。

国や地方公共団体などへの寄付

相続人が国や地方公共団体などへ寄付した場合、その財産分の相続税が非課税となる寄附金控除があります。ただし、適用には以下のような条件があります。

  • 寄付する財産は相続や遺贈によって取得したものであること
  • 相続税の申告期限までに寄付を完了していること

非課税枠を活用するために寄付を検討する場合は、適用される条件を詳細に確認することが重要です。

養子縁組による基礎控除額の増額

相続人が少ない場合、基礎控除額も少なくなります。その結果、相続税の非課税額も減少し、節税効果が薄れてしまいます。そこで検討したい方法が、養子縁組を活用して法定相続人の数を増やし、基礎控除額を増額する方法です。

法律上、実子がいない場合は養子2人まで、実子がいる場合は養子1人までが法定相続人としてカウントされます。よく見られる例としては、祖父母が孫を養子にする「孫養子」という方法があります。

ただし、養子縁組による対策には注意点もありますので、専門家に相談するなど慎重に検討することをおすすめします。養子縁組は単なる節税対策ではなく、家族関係に影響を与える重要な決断であることを忘れないようにしましょう。

相続税の税額控除

相続税で支払うべき税額を控除するためには、以下の項目を事前に把握しておくことが重要です。

  • すでに贈与税を支払っていた場合は「贈与税額控除」の対象となる可能性がある
  • 配偶者の法定相続分は控除できる
  • 相続人に未成年者や障害者がいる場合、相次相続(二次相続)が発生した場合も控除が適用される可能性がある
  • 被相続人が外国に資産を持っていれば、外国での相続税が発生しているかを確認しておく必要がある

贈与税額控除

贈与税額控除とは、被相続人が亡くなる前3年以内に相続人が贈与税を支払った場合に、その贈与税額を相続税から控除できる制度です。ただし、贈与税は年間110万円を超える贈与に対して発生するため、その金額以内の贈与で贈与税を支払っていなかった場合は控除の対象になりません。

配偶者の税額軽減

配偶者については「配偶者の税額軽減」という税制優遇制度があります。配偶者が取得する財産のうち、法定相続分または1億6,000万円のいずれか多い金額までは相続税が非課税になります。これにより、配偶者の生活基盤を守ることができます。

ただし注意すべき点として、この制度は法律上の配偶者にのみ適用され、内縁関係の場合は控除の対象にならないことを理解しておきましょう。

未成年者控除

法定相続人の中に未成年者がいる場合、その人が相続する財産に対して控除が適用されます。例えば親が亡くなった場合、残された未成年者はこの先の生活資金に困る可能性があります。それを防ぐための制度です。

なお、民法改正の影響により、控除を受けられる年齢は従来の20歳から18歳までに変更されています。

障害者控除

法定相続人の中に障害者がいる場合も、相続税の控除を受けることができます。障害者は一般的な生活を送るのに困難を抱えることが多く、さまざまなサポートを必要とすることがあります。

この控除を受けるには、85歳未満の障害者であることや相続時点で日本国内に住所があることなど、いくつかの条件が設けられています。適用を検討する場合は、事前に条件を確認しておきましょう。

相次相続控除

相次相続控除とは、10年以内に相続が続けて発生した場合に、先に納めた相続税額を控除できる仕組みです。例えば、祖父が亡くなってから10年以内にその相続人だった父も亡くなった場合を考えてみましょう。

祖父の財産を父が相続する際に相続税を支払い、さらに父が短期間のうちに亡くなって、今度は父の財産を子が相続する場合、同じ財産に対して短期間で2回も相続税を支払うことになり、家族にとって大きな負担となります。相次相続控除は、こうした二重課税の負担を軽減するために設けられた制度です。

ただし、適用には条件がありますので、自身のケースが該当するかどうかを確認してから活用するようにしましょう。

外国税額控除

外国税額控除とは、被相続人の財産が外国にあるために外国でも相続税がかかった場合、その税額を一定限度まで控除できる仕組みです。

日本に住所がある人は、国内外を問わずすべての資産が相続税の対象となります。しかし、外国にある資産については、その国でも相続税が課される可能性があります。そうなると二重に相続税を支払わなければならず、大きな負担となります。

こうした二重課税を防ぐために、外国で支払った相続税額を日本の相続税から控除できるのが外国税額控除の趣旨です。国際的な相続が発生する可能性がある場合は、この制度の適用条件を確認しておくとよいでしょう。

相続の税金対策のポイント

親族が亡くなった際に相続税をできるだけ抑えるためには、以下のポイントを押さえておくことが重要です。

  • 不動産など財産が多い人は計画的な相続税対策が必要
  • 死後でも可能な節税対策はあるものの、生前にしかできない対策もあるため早めの準備が大切
  • 二次相続についても早い段階から検討しておく
  • 不安がある場合は専門家への相談を検討する

相続税対策が必要な人

相続税は基本的に基礎控除を超える相続財産がある場合に発生します。特に以下のような方は注意して、早めの対策を検討することをおすすめします。

  • 相続財産が1億円以上ある富裕層の方
  • 財産のうち不動産の割合が多い方

特に財産が多い方は、生前にしっかりと対策を立てることで、次の世代により多くの資産を残すことができます。ただし、金融資産が少ない状態で相続税対策として贈与や資産組み換えを行うと、自身の生活資金が不足する恐れがあります。現在の資産状況を正確に把握し、余裕をもって対策を検討することが大切です。

二次相続まで考えておく

例えば、父が亡くなり母と子が相続(一次相続)した後、さらに母が亡くなった場合、子は父に続いて母の分も相続することになります。これを「二次相続」と呼びます。

二次相続では、以下のようなポイントに注意が必要です。

  • 法定相続人が減るため、基礎控除額が減少する
  • 配偶者控除など、一次相続で利用できた制度が使えなくなる

一般的に、一次相続よりも二次相続のほうが家族の税負担は増加しがちです。そのため、どのように資産を分割しておくかは早い段階(一次相続の時点)から考えておくことが重要です。

ただし、すべての資産を正確に評価し、分割をシミュレーションすることは容易ではありません。不安がある場合は、相続に関する専門家である税理士に相談することも検討してみましょう。

おわりに:相続税対策は特例・控除の活用と事前の対策がポイント

被相続人の財産が基礎控除を超えると相続税が発生します。そのため、特に金融資産が多い方は、生前に不動産購入や贈与などの対策を検討することが大切です。

ただし、相続の制度や仕組みは複雑で、不安を感じる方も少なくありません。そのような場合は、専門家への相談をおすすめします。

相続専門の税理士に相談することで、個々の状況に合わせた最適な対策を立てることができます。経験豊富な専門家のアドバイスを受けることで、相続税の負担を適切に軽減し、大切な財産を次世代に円滑に引き継ぐことができるでしょう。

相続税対策は早めの準備が肝心です。基礎控除や各種特例制度を理解し、計画的に対策を進めていくことで、相続時の税負担を効果的に軽減できます。

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